JPRiDEのQUEST(正式なモデル名は model i ANC MK2)は、見た目はごく普通の完全ワイヤレスイヤホンです。ノイズキャンセリングも付いていて、Bluetoothイヤホンとして普通に使えます。
ただ、このイヤホンの本題はそこではありません。専用アプリで自分で音を作れることに振り切った製品です。今回はJPRiDEさんから実機をご提供いただき、あわせて近日公開予定の新アプリSOUNDMake Slash 4.0をリリース前のモニターとして試させてもらいました。掲載しているアプリの画面は公開前のもので、公開版とは変わっている可能性があります。
QUESTとは|10バンドEQを自由に動かせるイヤホン

最近のイヤホンはたいていアプリと連動していて、イコライザー(帯域ごとに音を調整する機能)が付いています。QUESTが違うのは、その自由度です。
- 10バンドEQ。それぞれを20Hz〜20,000Hzのどこに置くかも自由
- フィルタータイプも選べる
- Q(効き幅の鋭さ)まで設定できる
DTMをやっている方ならピンとくると思いますが、プラグインのEQとほぼ同じことがイヤホンでできるということです。
基本スペック
- ドライバー:11mmと6mmのデュアルダイナミック
- ノイズキャンセリング:通常・外音取り込み・風切り音低減の3モード
- 再生時間:本体8時間、ケース込みで約36時間
- 重さ:片耳 約5g
- 防水:IPX4
- 価格:変動しますが1万円前半台で推移(30日間返品無料・1年保証付き)
開封レビュー|書類の多さと「音の冒険」という世界観

箱を開けたところからオリジナリティにあふれています。ロールプレイングゲームのような「音の冒険」という世界観で作られていて、だからQUESTという名前なんですね。
クイックスタートガイド、ユーザーガイド(完全な日本語)、操作一覧表、購入者限定のお知らせ、メーカー保証書、ブランドポリシーと、書類がとにかく充実しています。ここまで同梱している製品はあまりありません。
付属品
- イヤホン本体・ケース
- USB A-Cケーブル
- 替えのイヤーピース(5サイズ)
- 各種書類
イヤーピースが5サイズあるのは実用的です。後述しますが、サイズ選びで低音の印象が変わります。
プリセット|50種類以上、しかも中身が全部見える

アプリを開いて「メイク」から入ると、まずメーカーが用意したプリセットが並びます。名前が面白くて、「Jアイドル」「AOR」「80’s Jazz Fusion」のようにジャンルどころか年代まで切ってあります。切り替えるとかなり聞き味が変わります。
設定値が開示されている

よくできているのは、プリセットの中身が全部見られることです。「80’sロック」なら200Hzあたりを下げて1kHzあたりを上げている、というのが数値で分かりますし、説明も書かれています。
自分で音を作るときの参考になりますし、EQの勉強にもなります。まずはいろいろ聴いて好みのものを見つけ、初期設定の音に戻ってから「どう変えたいか」を考えるのが一番いい使い方だと思いました。
新アプリ SOUNDMake Slash 4.0 の新機能
ここからが今回の目玉です。新バージョンで追加される機能を見ていきます。
ドローモード|指で描いた形をEQにしてくれる

周波数特性を指で手書きすると、アプリがそれを再現してくれる機能です。60Hzを上げて、この辺は抑えて、歌のあたりを持ち上げて……と描くと、そのままEQができあがります。
EQの操作に慣れていない方でも手軽に音を作れるのがいいところです。作った状態はそのまま保存できます。
DJ-MIX|2つのプリセットを混ぜる

2つのプリセットを左右に置いて、その混ぜ方を決められるモードです。「80’sロック多め」といった配分はもちろん、高音は片方、低音はもう片方に寄せるといった設定もできます。
ゼロから作るのが大変な人でも、あるものを混ぜて自分の着地点を探せる。この発想は面白いと思いました。
PRO-MIX|現役エンジニアが作ったライブラリ

ライブハウスの響きやスタジオモニターを再現したものなど、現役のエンジニアが作ったライブラリが追加されます。こちらは有料での提供で、設定値の中身を見ることはできません。お試しで聴けるので、気に入ったものがあれば購入を検討する形になります。
DRIVE|音圧を5段階で調整

音圧を5段階でコントロールできる機能です。かなり音が前に出てくるので、気をつけながら操作するのがいいと思います。基本はLv1で十分というのが正直な感想です。
ノイズキャンセリングと外音取り込み
ノイズキャンセリングは普通に効きます。エアコンの音などはしっかり消えてくれます。個人的に気に入ったのは外音取り込みモードの自然さで、聞こえてくる音の不自然さがあまりない点が印象に残りました。
音質|AirPods Pro 2と比べてみた

普段使っているAirPods Pro 2と比較しながら聴きました。ただし先に断っておくと、QUESTは1万円台、AirPods Pro 2は4万円台です。フェアな比較ではない前提で読んでください。
正直な感想として、素の音のクオリティは明らかにAirPods Pro 2の方が上です。差を感じたのは次の3点でした。
- 中域の解像度:ボーカルやギターが集まる帯域の細やかさ
- 奥行き感
- 左右の分離感
QUESTは少しこもった、箱の中にいるような感覚がありました。
低音が弱いと感じたらイヤーピースを変える
低音は最初「締まりが悪い」と感じたのですが、イヤーピースをMからLに変えたらだいぶ改善しました。耳の密閉度で印象が変わるので、低音が弱いと感じた方はサイズを試してみてください。
それでもQUESTが面白い理由

差を並べましたが、QUESTがダメという話ではありません。価格差もありますし、何よりQUESTは音を変えられます。気分によって変えられるし、自分で音を探しに行って創造的に音楽を聴ける。このコンセプトは挑戦的で面白いと思います。
私もデフォルトの設定を自分なりに調整しました。低音を少し補強しつつ、変に強調はせず自然に聴ける形を目指した設定です。作り手側が意図した音が鳴っていないと気になってしまうタイプなので。これで聴くとかなり気分よく音楽が聴けています。
気になった点
音質以外で気になった点もお伝えします。
- 全体のノリが元気すぎるかもしれない:チュートリアルやガイドツアーが丁寧で遊び心もあるのですが、私にはやや賑やかに感じました。ここは好みが分かれると思います
- Bluetoothのマルチポイント非対応:複数機器に同時接続したい方には痛いところです
- プリセットが膨大で迷いやすい:初心者の方はどれを選べばいいか迷うかもしれません。記事や動画が用意されているので、読む方なら気にならないと思います
まとめ:音をいじり倒したい人に刺さるイヤホン
JPRiDEのQUESTと新アプリ SOUNDMake Slash 4.0 を試した結論です。
- 機能は攻めていて、めちゃくちゃ面白い
- 音質は価格なり
10バンドEQを自由にいじれて、ドローモードやDJ-MIX、プロが作ったライブラリまである。ここまで音作りに振り切ったイヤホンは他にありません。
おすすめなのは、普通のイヤホンに飽きている方、自分の好みで音を調整したい方、設定をいじるのが好きな方です。向かないのは、いじるのが面倒で、買ってそのまま最高の音で聴きたい方。その場合は素直に大手メーカーのモデルを選んだ方がいいと思います。
オーディオの世界には「原音に忠実」という言葉がありますが、このメーカーは「自分が好きな音、自分が気持ちよくなれる音」の追求に振り切っています。その割り切りが面白い製品でした。
